2015年 06月 11日
春から夏は時間の流れが速い フィリピンから帰国してすでに2ヶ月を経過、やっと最終部分の写真の整理が終わったので2回に分けてアップしたい 野鳥の撮影記録などは5月中にアップが終わっているので残ったのは主に蝶の写真だ 毎回のことだが、参加するのはバードウォッチング目的のツアーなので、蝶や花は「おまけ」の部分、つまり成行き任せになる 南国なので多くの蝶を期待したのだが、予想外に蝶を見る機会は少なかった それでも2週間近くフィールドを歩き回ったので、蝶の写真はかなりの撮影枚数にはなった ただフィリピンには英語版でも現地語版でも「蝶図鑑」がまったく存在しない 日本との共通種もあり、オーストラリアやタイ・マレーシアの図鑑から種名を推定することもできるが、同定に手間がかかり、整理が遅くなってしまった オナシシロオビアゲハ まずはアゲハの仲間から このオナシシロオビアゲハは全くの初対面である 比較的遠い位置から望遠レンズでの撮影だったので、モンキアゲハかシロオビアゲハと思い込んで気軽にシャッターを押したが、よく見ると無尾型のアゲハだった 日本では迷蝶として与那国島で最終記録があるが基本的にはフィリピンの蝶、自分にとってはフィリピン遠征記念の蝶である (2枚目の写真は被写体ぶれがあり、ちょっと恥ずかしいのだが、1枚目の写真だけでは無尾型であることがわかりにくいので敢えて掲載した) トリバネアゲハ 夕方野鳥を探している時に、上空にトリバネアゲハが飛んでいるのを見つけた トリバネアゲハの仲間は最大クラスの大型蝶でマレーシアからインドネシア、ニューギニア、オーストラリアにかけて分布する フィリピンで見られるのは近似種のキシタアゲハである可能性が高いが、いずれにしても写真が不鮮明で種類までは識別不能である とにかく上空に飛んでいるでかい蝶を見た証拠写真でしかない ミカドアゲハ こちらは日本と共通種 といっても平凡なアオスジアゲハではなく、日本では南西諸島や本州・四国のごく一部の温暖地域など生息域が狭いミカドアゲハのほうだった (正確な記憶ではないが、伊勢神宮の楠で最初に発見されたので「帝」の名前を戴いたのではなかったか) ツマベニチョウ ツマベニチョウはインド・スリランカから東へ広く東洋熱帯に分布する「南の蝶」である 日本でも沖縄へ行けば普通に見られるし、九州の指宿で出会ったこともある 裏面は地味で他のキチョウたちに混じって地面で吸水する姿はあまり魅力的でないが、翅先のオレンジが見えると全く雰囲気が変わってしまう クロヘリシロチョウ 冒頭に記したようにフィリピンには「蝶類図鑑」がない 詳しい人にお聞きしてみるとインターネットだけが頼りだという 帰国後、悪戦苦闘してたどり着いたこの蝶の名前はクロヘリシロチョウ(Cepora boisduvaliana) 日本でいえばミヤマモンキチョウにデザインが似ているが雰囲気は全く違う イワサキシロチョウ 前掲のクロヘリシロチョウによく似た蝶だが少し小さい こちらはイワサキシロチョウ(Appias panda)またはベニシロチョウ(Appias nero)のメスだと推定した ベニシロチョウ 吸水するカワカミシロチョウに混じってオレンジの目立つ派手な蝶がいた ベニシロチョウのオスである 初対面の蝶だが日本の図鑑で予備知識を持っていたのですぐに分かった インドからインドネシア、フィリピンにかけて広く分布する東洋熱帯の蝶であるが、とにかくオレンジ一色で、シロチョウの仲間だとは信じがたい カワカミシロチョウ カワカミシロチョウは迷蝶として南西諸島に記録があるので日本の蝶類図鑑にも登場する メスはモンキチョウのように黒い縁があるが、オスのカワカミシロチョウは純白で(裏面には多少黄色味がある)翅の先は尖っている 野鳥を探している途中でそのカワカミシロチョウが集団吸水しているのを見つけた 鳥をそっちのけにして蝶の写真を撮ったが、近づくと紙ふぶきが舞うように飛び散ってしまうので苦労させられた ウスキシロチョウ こちらも東洋熱帯に広く分布する大型のシロチョウ 日本でも沖縄には定着しているので「日本の蝶」として何回も対面している フィリピンではもっと多いのではないかと期待していたが、出会いは一度だけだった ムモンキチョウ 日本のキチョウはキチョウのほかにキタキチョウ、タイワンキチョウなどがいてややこしいが、いずれも裏面に褐色斑がある フィリピンでは写真のように裏面にまったく斑のないまさに清純なキチョウがいろいろな場所で見られた 同定には苦労したがやっとムモンキチョウ(Gandaca harina)に行き当たった 普通キチョウ類の英名はGrass Yellowだが、この蝶の英名はTree Yellowという タイワンキチョウ キチョウは英名Common Grass Yellow、タイワンキチョウは英名Three Spot Grass Yellowという 名前の通り前翅裏面中室の斑紋が三つあるのがタイワンキチョウなので、写真の1枚目2枚目はタイワンキチョウでよいと思う 3枚目は問題で前翅裏面先端部の大型褐色斑も目立つことから別種(Eurema salilata)ではないかと考えているが資料不足で断定できない BROAD-MARGINED GRASS-YELLOW 表面外縁の黒帯から英名は間違いないと思うが和名はわからない(Eurema puella) 根拠はオーストラリアの鳥類図鑑である フィリピン、ニューギニア、オーストラリア北部は意外と距離が近く、共通種も多いので、オーストラリアの図鑑は参考になる 開翅の写真が撮れず残念だが3枚とも裏面から表面の黒帯は透けて見えている タイワンモンシロチョウ 中国やインドシナ半島などアジアに広く分布するモンシロチョウで名前のように台湾の固有種ではない 日本の図鑑などによるとフィリピンの本種も近年の侵入だという 何年か前この蝶を撮影するためわざわざ与那国島まで遠征したことを思い出した 日本のモンシロチョウより紋が大きく、後翅の縁にも紋が展開する クロテンシロチョウ アジア南部ならどこでも見られると言って過言ではないグローバルな普通種 日本でも南西諸島に定着し、もう普通種になってしまったが、11年前リタイアした直後は日本では希少種で撮影のため与那国や石垣に足を運んだものである 今回はマニラ近郊の公園でジツグミを探索中、数頭のクロテンシロチョウが絡んでいるのを見つけ、多数の開翅・飛翔写真を撮ることができた ヒメシルビアシジミ 日本国内限定の話であれば、この蝶はシルビアシジミかヒメシルビアシジミである 11年前に蝶の写真を始めたころはこの2種はまだスプリットされておらず同一種だった 特徴は後翅裏面前縁中央部の黒点の配列が下の黒点が内側に寄ることである その観点から写真の蝶はどちらかであり、日本国内なら南に棲息するのがヒメシルビアシジミなので、この蝶は間違いなくヒメシルビアである ただフィリピンにはまた別のシルビアシジミがいるかもしれず、詳細なデータもないので断定はできない ホリイコシジミ 日本でも南西諸島ではヤマトシジミ近縁の蝶の種類が多く同定に苦労する 写真の蝶は亜外縁の斑紋列が連結して線状になっているので日本国内撮影なら間違いなくホリイコシジミなのだが、フィリピンの蝶に関する情報が少ないので別の種類かもしれない ヤマトシジミ ヤマトシジミは日本の国名を背負う代表的な日本の蝶だが、実はアジアに広く分布する普通種である 翅裏の写真が鮮明でないので一概に断定できないが、シルビア系でもホリイでもハマヤマトシジミでもなさそうなので無難にヤマトシジミとしておく オジロシジミ 後翅裏面外縁下部に橙色で縁取られた二つの黒点があるのでオジロシジミで間違いないと思う 10年ほど前、初めてプライベイトで沖縄県を訪れこのオジロシジミに出会った ところが数年ほど前に沖縄県にこの蝶によく似たクロマダラソテツシジミが侵入して勢力を拡大し、オジロシジミはほとんど見られなくなってしまった 不思議なことに今回のツアーでは悪名高いクロマダラソテツシジミ(クマソ)には出会わなかった シロウラナミシジミ フィリピンにシロウラナミシジミの近似種がいるかどうかはわからないので絶対とはいえないが、99%シロウラナミだ 国内では西表島の白浜に必ずいる蝶にフィリピンで再会した カクモンシジミ系 裏面のデザインがカクモンシジミに似ているのでカクモンシジミ系としたが、カクモンシジミではないようだ カクモンシジミは日本でも迷蝶で今までに出会ったことがない とにかくフィリピンの蝶に関するデータがないので、シジミチョウ系の小型の蝶の同定は難しい リュウキュウウラボシシジミ リュウキュウウラボシシジミは日本の南西諸島に数が多いので間違いない 今回のツアーでは複数の場所でこの蝶に出会った 帰国後チェックしてみるとミャンマー、タイ、ベトナム、インドネシアなど東南アジアに広く分布するようだ 非常によく似た蝶で日本では対馬の特産種であるツシマウラボシシジミが鹿の食草食害で絶滅寸前になっていることを思い出し、改めて心を痛めている LESSER DARKIE ここから先は日本と共通性のないシジミチョウなのでタイトル表記は英語になる 暗い場所での撮影なので写真のレベルが低いのだが、間違いなく蟻と共存していることを確認した 日本でも蟻と共生するシジミチョウは数多いが、成虫の蝶と蟻が同時に写っている写真は今まで見たことがない STRAIGHT PIERROT モノトーンだがデザイン的にメリハリの利いた魅力的なシジミチョウだった COMMON POSY 悪戦苦闘の結果マレー半島の蝶類図鑑にこの蝶を見つけた 前翅表面が黒褐色、後翅表面はメタリックブルーという不思議な蝶だ(裏面にはオレンジがある) 日本でいえばキマダラルリツバメに近い種類のようだ COMMON IMPERIAL 本編(フィリピンの蝶01)の最後はこのシジミチョウ 最初に見つけた時は度肝を抜かれた 冒頭タイトルバックの写真のように逆立ちした蝶の尾状突起が異常に長く直立しているのだ 帰宅後ネットで調べた結果Common Imperialという英名がわかった インドやシンガポールには生息する蝶のようだ 尾状突起が先端部分で直角に折れ曲がっているのは風向きによるためのようで、先端だけがフレキシブルになっているらしい 長い間いろいろな蝶を見てきたが、こんなに尾状突起の長い蝶が存在することを70を越えて初めて知った
by mustachio
| 2015-06-11 14:28
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