2017年 11月 22日
11月14、15,16日の3日間、宮城県登米市を中心に探鳥をした 有名なバードウォッチングのポイントである伊豆沼と蕪栗沼周辺の地域である (以前訪れたのは確か7年前、東北大震災より前だった) 冬になるとこの地域にはマガンの群が飛来し刈り取りの終わった田んぼで落穂を採餌する その数は8万羽ともいわれ、とにかく半端な数ではない 14日の午後から16日の午前中まで実質2日間、写真を撮って回ったので2回に分けてご紹介したい マガンの棲む環境 マガンは冬鳥、繁殖地は北極海沿岸で冬になると南に渡ってくる 「雁が渡る」シーンは子供のころから馴染み深いが、実際のところ関東地方では雁の渡りを見る機会は非常に少ない 宮城県の伊豆沼と石川県の鴨池がマガンの終結地として有名で、そのあたりが生息地(越冬地)としては南限のようだ (今年は関西でもマガンが飛来しているとの情報があり、少しは様子が変わるかもしれないが) 今回訪れた登米市は東京から車で4時間程度、伊豆沼や蕪栗沼はラムサール条約の対象となる生物の保護地域である 周辺は水田が広がり、マガンや白鳥などの水鳥は昼間稲刈りの済んだ田んぼで採餌し、夜は外敵に襲われることのない沼に集まって眠る 棲息環境は写真の通りだ 11月の東北はもう冬の世界、それほど寒い日ではなかったのに周辺では野草も昆虫もほとんど見られなかった セイタカアワダチソウ 唯一元気だったのがセイタカアワダチソウ 最近、都内では全く見かけなくなってしまったが、この地域ではまだまだ勢力が衰えないようであたり一面を黄色に染めていた オオマツヨイグサ 夏の花のイメージがあるのに意外と元気に咲いていたのがオオマツヨイグサ こちらも帰化植物だが、外国の植物は日本の植物よりタフなのだろうか 日本の植物でもキク科の花は晩秋に咲くものが多い 撮影時にはヤマジノギクかと思っていたが、帰宅して調べてみると東北には分布しないようなので、この花はただのヒメジョオンのようだ トキワサンザシ 蕪栗沼など野鳥観察ゾーンには季節がら赤い実が多く見られた ツルウメモドキなどの実は数が疎らで写真写りが良くないため、実をたくさんつけた植物を撮影したが、帰って図鑑を調べてみると西アジア原産のトキワサンザシらしい わかりやすくいうとピラカンサのことでピラカンサなら東京の我が家の庭にもある 昆虫類はモンシロチョウを1頭と写真のアキアカネのペアを確認した この時期のアキアカネは終末が近いはずなのだが、健気に種族維持活動に励んでいた マガン/朝の飛び立ち 前置きが長くなってしまったがマガンの話に入りたい マガンは夜の間、猫などの外敵から襲われにくい湖面で眠り、朝になると周辺の田んぼなどに採餌に出かける 数千羽単位の雁が一斉に飛び立つのでその羽音は大変な迫力である カメラマンは5時起きで暗いうちから現場に待機するのだが、朝焼けの空をバックにした飛翔風景は素晴らしく、1時間ほど興奮状態でシャッターを切り続けることになる 人間もそうなのだが、動物にも植物にも群を作るタイプとそうでないタイプがある イメージ的に浮かぶのは動物でいえばアフリカのヌーの大群、鳥ではフラミンゴの大群などである 昆虫ではバッタの異常発生などがあるが大群と呼べるような群れをつくるのは蚊ぐらいだろうか 群を形成していると外敵から襲われても被害が限定的になるというメリットがあるが、食料確保という点では明らかにディメリットだ 種族保存のためのメリットとディメリット双方のバランスで群の大きさが決まるのだと思うが、8万羽以上という雁の群を冬の間食べさせてくれるだけの十分な穀物(落穂)がこの地域にはあるのだろうか 朝、水面を飛び立ったマガンは昼の間も群を形成して行動する 採餌場の競合を避けるため連隊は中隊、小隊レベルに分散するが、それでも結構まとまった数での行動になる マガンの群の中にシジュウカラガンやオオハクチョウが混在するケースも多々ある 農作業をする人や耕運機などの機械には慣れているので近づいても平気なようだが、カメラマンなどには敏感なため近距離での撮影は車の中からになることが多い 猫などの動物やオジロワシなどの猛禽類の動きには非常に敏感で、採餌中の群が一斉に飛び立つことも多い マガン/個々の表情 とにかく数が多いので写真も群の撮影が主体になってしまうが、個体もなかなか可愛い ただ日本は越冬地で繁殖地ではないため求愛行動など特殊な動きは全く見られない 彼らは日がな一日、食っているだけなのだ 次号(vol.2)で近似種との識別ポイントにも触れるが、マガモの基本形は脚と嘴のオレンジ色、額(嘴の基部)の白、胸のまだら模様などがチャーミングポイントになる アイリング(目の周りの黄色いリング)はマガンにはない
by mustachio
| 2017-11-22 17:00
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