2015年 10月 15日
このブログを見ていただいている蝶の専門の方にお尋ねしたい もし「タイトルバックの蝶はカワカミシロチョウ」とコメントしたら、「これは間違いなくナミエシロチョウ」とクレームが出るだろうか 今年の春フィリピン訪問でカワカミシロチョウの集団吸水を撮影しており、今回与那国で撮影した写真は前翅の尖り具合がそのカワカミシロチョウそっくりなのである 日本ではカワカミシロチョウは迷蝶で定住(世代交代)は確認されていない 撮影時には「日本の蝶の撮影種数がまた1種増えたか」と小躍りしたが、帰宅していろいろ検討してみるとこの蝶はナミエシロチョウのオスと見るのがどうも妥当のようだ(要するに撮影角度によって前翅が尖って見えるだけで、他に今回撮影した類似種は明らかにナミエシロチョウとわかるものばかりなのである) 今回の与那国行で撮影した蝶は割と普通のものばかりで、いわゆる迷蝶との出会いはなかった 与那国で迷蝶を狙うのなら5、6月がベストだと現地の方から教えていただいた シロミスジ 2度目の与那国訪問の最大目的はこのシロミスジの撮影であった 日本の蝶の未撮影種がほとんどなくなり、小笠原や南西諸島など南方系の蝶を狙うことが多くなっている 6年半前の訪問時にこのシロミスジのポイントを2回ほど訪れたが、残念ながら出会いがなかった その後インドのアッサムでこの蝶を撮影したが、ホームページの「日本の蝶」にはカウントできないので、わざわざ与那国まで撮りに行ったというのが実情である 島に到着後、台風の被害が残っている林道を走ってポイントへ向かったが、今回は運よくシロミスジを発見、無事にカメラに収めることができた次第である ちなみにシロミスジは3列目白帯を構成する白斑の1個1個に黒点があるのが特徴だ リュウキュウムラサキ インドからオーストラリアまで東洋熱帯に広く分布するタテハチョウで南西諸島南部には定着している (九州の佐世保でもこの蝶を撮影したことがある) 紫色に大きな白斑を持つ美しい蝶だが、撮影機会は多いので多少飽きてきている ところがこの蝶によく似たメスアカムラサキという蝶がいて、こちらがまだ国内未撮影となっている メスアカムラサキのオスの表面はリュウキュウムラサキのように紫系で前翅、後翅に大きな白斑がある 多少差が出るのが裏面で、メスアカムラサキは褐色の赤みが強く白帯が太い 与那国ではメスアカムラサキが出る可能性が高いので見つけた瞬間期待したが、裏を確認すると間違いなくリュウキュウムラサキのほうであった アカタテハ 与那国島にアカタテハがいた といっても特に不思議ではなく、この蝶は北海道から南西諸島まで日本全国に分布する(個人的なイメージでは信州や北海道など寒い国に合うように思うが) さらに近似種のヒメアカタテハのほうは世界中どこにでもいるというコスモポリタンである スジグロカバマダラ 南西諸島を代表する蝶 南の島ではどこでも見られるので多少飽きがあるが、秋の与那国では数が少なく一生懸命シャッターを押した 近似種のカバマダラのほうは1頭も見かけなかった アサギマダラ 渡りをする蝶として知名度の高いアサギマダラがたくさんいた 長野県など関東近郊では秋にアサギマダラを捕獲しマーキングして放蝶する催しが行われる このマーキングしたアサギマダラを九州や沖縄で捕え、渡りの実態を把握する研究が進められているがまだ研究途上のようだ 与那国のアサギマダラは本土から渡ってきた個体かもしれないが、マーキングしたものは1頭もいなかった リュウキュウアサギマダラ 与那国にはもっとマダラチョウ類が多いのではないかと期待していたが、アサギマダラ以外はこのリュウキュウアサギマダラを2,3回見かけた程度だった 台風のせいだろうか、それとも秋には蝶が少ないのだろうか クロテンシロチョウ 東南アジアから入り込み南西諸島では定着してしまった小型のシロチョウ 6年半前の与那国で当時めずらしかったこの蝶を探し回ったものだが、その後東南アジアへ何回も出かけたくさんのクロテンシロチョウを見てきたので、与那国で見かけても感動がなくなってしまった ナミエシロチョウ こちらが冒頭のコメントで触れたナミエシロチョウ、最初の2枚がオス、後の2枚がメスだ カワカミシロチョウとナミエシロチョウはよく似ていて、オスでは前翅の尖り方が鋭いか鈍いか程度の違いしかない メスも両種は外見が非常によく似ているのだが、ナミエシロのほうは前翅黒縁にある白斑が一つ多く写真で判るように前縁ぎりぎりまでつながっている ナミエシロチョウは数は多くないが南西諸島には定着し完全に日本の蝶になっているようだ クロマダラソテツシジミ クロ・マダラ・ソテツシジミの頭文字をとってクマソと呼ぶ 東南アジアの普通種で食草であるソテツについて日本に入り込み、ここ数年の間に南国では迷惑なほど増えてしまった 6年半前の与那国訪問時、帰りの石垣島も含めて当時希少種だったこの蝶を探したが、4月初旬という時期が悪かったせいか1頭も見つけることができなかった 今では与那国でも石垣でもソテツのあるところではいやというほどクマソが飛んでいる アマミウラナミシジミ 南の島に来るとキラキラとブルーに光るウラナミシジミが多い 現場では図鑑がなかったのでルリウラナミシジミかと思って撮影したが、後で確認したらアマミウラナミシジミのほうだった 太陽光線を受けてキラキラ輝く蝶は飛翔撮影が難しいが見るだけで楽しい ウラナミシジミ 南の蝶だが、ウラナミシジミは毎年発生を繰り返しながら北上し北海道南部まで到達する(関東では秋に数が増える) ただ越冬可能なのが本州・四国・九州の南岸限定で、毎年南から北へ向かって勢力分野の拡大に挑戦する姿勢が健気である タイワンクロボシシジミ 林縁の蝶 色彩がないのでキラキラというイメージはないが、ライトが点滅するようにチラチラと飛ぶ 先島諸島には普通に見られる ヒメシルビアシジミ シルビアシジミとヒメシルビアシジミが別種としてスプリットされてそろそろ10年になるだろうか 昔は(というか、リタイアして蝶写真を始めた時は)このヒメシルビアシジミはまだシルビアシジミだった 後翅前縁黒点列のすぐ下にある黒点が内側にずれるのが識別のポイントである ヤマトシジミ 南西諸島にはヒメシルビアシジミのほかにホリイコシジミやハマヤマトシジミなどヤマトシジミに近いシジミチョウの種類が多い フィールドではまず写真撮影で識別は後回しになることが多いが、帰って調べると普通のヤマトシジミだというケースが多い まあそれも楽しみの一つではあるが クロボシセセリ デザイン的には関東近郊のセセリよりもはるかにセンスがいいと感じられる蝶なのに名前が良くない 近代になってから命名された(つまり昔の日本人には縁がなかった)生物の名前は即物的でデリカシーに欠けるような気がする ユウレイセセリ もっとひどい名前がこのユウレイセセリ 食草や生活環境がよくわからず正体不明のセセリというのがネーミングの根拠だと前に何かの本で読んだことがある 実物は写真のように可愛いセセリで幽霊のイメージは全くない オキナワコアオハナムグリ 別名アオヒメハナムグリ 名前の通り沖縄諸島固有のハナムグリのようだ 胸の両側面に白線があるのがチャームポイントである アカアシセジロクマバチ 最近では余裕ができてきて蝶以外の昆虫にも目を向けるようになった この蜂も南西諸島の固有種のようだが、例によってイージーネーミングで「赤脚背白熊蜂」という イヌビワオオハマキモドキ シロバナセンダングサの花の上にエメラルドグリーンに光る小さな昆虫を見つけた じっとしているので一瞬甲虫かカメムシと思ったが、よく見ると蛾のようである 帰宅後調べてみるとやはり蛾の一種で、日本の南西諸島からオーストラリアにかけて東洋熱帯に分布するという 蛾は蝶よりも1ケタ種類数が多いので高齢者にとってはハードルが高いのだが、少しずつ勉強していきたい モンシロモドキ 与那国昆虫写真のラストバッターも蛾 昼間飛び、花に集まる蝶のような蛾で、名前もモンシロモドキという モドキが2種続いたので思い出したのが「蝶の未撮影種」 リタイア後12年の成果で日本の蝶をかなりカバーしたが島を除く本土の蝶で未撮影となっているのがヒョウモンモドキとクロヒカゲモドキの2種 今年はもう蝶のシーズンが終わってしまったので来年こそ「モドキ」2種をクリアしたいと思っている #
by mustachio
| 2015-10-15 18:41
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