還暦からのネイチャーフォト

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2014年 06月 03日

小笠原母島探訪記

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家内と二人、世界自然遺産指定の小笠原に行ってきました
ご存じかと思いますが、小笠原諸島への定常交通機関は「小笠原丸」だけ
普通のシーズンは1週間に一度の船便で東京竹芝桟橋の出港から帰港まで6日間かかります
(竹芝~父島は片道26時間、父島~母島は2時間です)

撮影のターゲットは鳥が固有種のメグロと海鳥、蝶はいわずと知れたオガサワラシジミとオガサワラセセリでした
結論から申し上げると鳥の写真は十分な成果がありましたが、蝶は全くのカラ振りでした

もともと幸運に恵まれなければオガサワラシジミは難しいとわかっていましたし、オガサワラセセリのほうは絶滅寸前で仮に1週間滞在しても出会いはないだろうと最初からあきらめていました
母島に滞在したのは実質2日、そのうち1日はガイドさんの案内で島全体を回り、残りの1日でオガサワラシジミを狙ってポイントで待機したのですが途中から雨が降り出しギブアップしました

さらに申し上げると母島滞在中、蝶を1頭も見ませんでした
過去の経験によれば、ニュージーランドやガラパゴスなど大陸から遠く離れた島には蝶は棲息していないのです
小笠原には移植された柑橘類についてきたアゲハが少し定着しているようですが、島の中はセンダングサなど花がいくらでも咲いているのにモンシロチョウやベニシジミなど普通種の蝶も南方系の蝶も全くいないのです

オガサワラシジミとオガサワラセセリは絶滅寸前の超希少種で、蝶愛好者の方は蝶との出会いが全くないことを覚悟して小笠原を訪問してください

オガサワラシジミ
写真は蝶を直接撮影したものではありません
オガサワラシジミを守ろうというキャンペーンの看板を撮影したものです
食草であり吸蜜植物でもあるオオバシマムラサキ(写真)はそろそろ咲き始めというタイミングだったのですが、3時間ほど粘っても全く飛来がありませんでした
昔はいくらでも飛んでいたといわれるオガサワラシジミが消えてしまったのは、グリーンアノールとアカギが原因といわれています
現在小笠原の人たちはオガサワラシジミの保護復活に取り組んでおられますので、いずれ戻って来てくれるものと期待はしております
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グリーンアノール
そのグリーンアノールは島のあちこちで見かけました
写真のように見た目は美しいトカゲですが、もともと数が少ない島の昆虫を食い荒らしているようです
島の人の話によれば少し前まで母島にはグりーンアノールがいなかったのにある人(狭い島なので名前もわかっているようです)がいたずら半分で父島(海外からペットとして持ち込まれ野生化したもの)から持ち帰り、周囲から非難されたため飼うのをあきらめて逃がした数匹が瞬く間に増えてしまったということでした
現在オガサワラシジミの保護ゾーンでは下の写真のような「アノール返し」(オーバーハングになった囲い)や「アノールホイホイ」(粘着剤利用の捕獲器)を設けてグリーンアノール退治に取り組んでいます
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アカギ
今回初めて知った事実ですが、グリーンアノールの他にもう一つの外来種侵入問題が小笠原にはあるようです
幹が赤いので「赤木」  生命力の非常に強いこの植物が繁茂して小笠原諸島の本来の植物相を破壊し始めているのです
(オガサワラシジミの食草の一つであるコブガシはこの影響を受けています)
アカギが南アジアから小笠原に持ち込まれたのは産業上の理由です
太平洋戦争以前には小笠原に製糖事業が盛んでした  サトウキビを煮詰める燃料用の薪として意図的に導入されたのがこのアカギでした
成長が速く、油分を含むのでエネルギー効率の良い植物でしたが、小笠原の土地と相性が良かったようで瞬く間に勢力を拡大して行ったようです
巨木で日影を作るのと他の植物に害を与えるような揮発物質を発生させるとかで到る所にアカギの森ができてしまっています
世界遺産認定の条件として80年以内に外来植物のアカギを完全に駆除することが前提となったようですが、この植物は異常に生命力が強く、切っても枯らしてもすぐに枝が生え、さらに写真のように種からどんどん双葉が出て繁茂して行くようです
固有の植物を保護しながらアカギを駆除するのは非常に難しいようですが、放っておくとオガサワラ全体がアカギ林になってしまいそうで東京都小笠原村は真剣に対策を取り始めているようです
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アフリカマイマイ
アノールやアカギほどではないにしても「ア」の付く外来生物は小笠原の脅威のようです
小笠原諸島は固有のカタツムリ類の宝庫で世界遺産認定の重要な要素が「カタツムリ」だといいます
1930年代に台湾からペットとして持ち込まれたというアフリカマイマイも島のあちこちで見かけました
最近では天敵の寄生虫プラナリアのせいで数が減っているそうですが、同時に固有種のカタツムリ(2枚目の写真)も減っているそうで、生物学的に見た小笠原の存在価値がどんどん下がっているといわれています
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ムラサキオカヤドカリ
小笠原はオカヤドカリが多いことでも有名です
アフリカマイマイより少し大きいヤドカリを道端で良く見かけました
陸生の甲殻類で危険を感じると死んだふりををするのが面白いところです
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アオモンイトトンボ
種類数は多くないようですがトンボもいます
写真のトンボはアオモンイトトンボだと思いますが正確ではありません
固有種のオガサワラトンボとオガサワライトトンボはグリーンアノールにやられて父島・母島では絶滅したようです
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アオウミガメ
太平洋の真ん中にある島なのでウミガメは産卵に来るようです
写真のカメはアオウミガメだと思います(海洋生物は嫌いではありませんが知識の限界を超える不得意分野です)
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小笠原の風景写真
生物にこだわらなければ、小笠原はたいへん美しく素晴らしいところです
蝶に振られたので自然写真家から風景写真家に一時的に転向しましたので、風景写真を載せておきます
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小笠原丸出港見送り風景
最後にネイチャーフォトではありませんが小笠原丸出港の見送り風景の写真をアップしておきます
週に1回の定例行事のようですが小笠原丸が出港する時には多くの人が来て、和太鼓などで盛大に見送りをしてくれます
さらに港内を出るまでたくさんの船が小笠原丸に並走して見送りをしてくれます
最後には見送りの船からたくさんの人たちが海に飛び込み海中から手を振って別れの挨拶をしてくれます
(胸の大きいきれいなお姉さんも海に飛び込んでくれました)
これだけ皆さんからの「おもてなし」を受けたのでは、もう一度小笠原訪問は避けられないでしょう
健康が維持できれば数年のうちに母島を再訪し(今度は10日滞在して)オガサワラシジミとオガサワラセセリのリベンジをしたいと考えております
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母島では鳥と植物の写真をしっかり撮ってきましたので、次号・次々号で紹介させていただきます

by mustachio | 2014-06-03 18:16 | Comments(3)
Commented by ダンダラ at 2014-06-05 09:12 x
私も今年小笠原に行こうと思ったのですが、あまり芳しくない状況だということであきらめました。
オガサワラシジミもですが、オガサワラセセリのほうがより深刻な状況だとか。
そんな状況を知りながら、グリーンアノールをわざわざ持ち込む人もいるんですね。
Commented at 2014-06-05 09:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by mustachio at 2014-06-05 13:43 x
ダンダラさん
ご無沙汰しています
オガサワラシジミのほうは保護キャンペーンが進んでいるのでこれからはチャンスが増えるかと思います
オガサワラセセリのほうは蝶愛好家以外の普通の人は全く興味がないようで島では話題にも上りません(ガイドの方も全く情報を持っていません)
チョウ類保全協会など有志の支援活動が必要だと思います


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