2014年 07月 11日
ジャノメチョウ科(最近の分類ではタテハチョウ科)にクロヒカゲモドキという超地味な種類の蝶がいる 林道などで普通に見られるクロヒカゲによく似た蝶で「前翅裏面の眼状紋(蛇の目)が3個」といった程度の特徴を持つ 色彩的にも特に魅力的ではなく、昔は関東甲信越でも比較的数が多かったのでスポットライトを浴びるようなこともなかった そのクロヒカゲモドキがここ十年で激減し希少種になってしまっている 10年前から蝶の撮影を始め、当時はこの蝶の撮影は簡単なことだとタカをくくっていた 同好者の方と立ち話をしても「あそこの林道にはいくらでもいますよ」という話ばかりだったが、どういうわけか5年たっても出会いがない 古い文献や採集案内などを漁り、発生シーズンにはピンポイントで探しに行くのだが結局一度も巡り合わずに10年が過ぎてしまった 昨年、自分の所属するゴルフクラブの関係者の方が蝶に詳しいことがわかり、今年は詳細なポイントの地図までいただいたので、7月9日家内と山梨県の韮崎方面へ向かった 情報提供いただいた方はその場所で6、7年前に複数のクロヒカゲモドキを確認しておられ、自分も地理的には良く知っている場所だったが、1時間ほど探し回っても全く現れない その内に一人の採集者の方が現地に来られ、話をしてみると、その場所は5~6年ほど前は好採集地だったが周辺の開発(伐採)の影響で数年前から数が減り始めたという 特に今年はポイントの片側にある雑木林(メインは赤松)が伐採されてしまい、周囲が明るい空き地になってしまったので「今年は無理だろう」とのご意見であった 今年は間違いなく撮影できると意気込んでいたのに姿が見られずまさに「意気消沈」で引き上げることになった次第である 撮影地の状況をブログにアップするのはタブーなのだが、蝶のいないフィールドの写真なら差し支えないと思うので小さいサイズの写真をアップしておく(写真の右側が昨年伐採されてしまった雑木林跡である) 余談になるが山梨県では政策的に太陽光発電を奨励していて補助金が支給されるので森林伐採が急速に進んでいるという 自然に優しいはずの自然エネルギー利用が自然破壊につながるとしたら皮肉な話である ジャノメチョウ クロヒカゲモドキを探すために周辺のブッシュを叩くのだが、飛び出してくるのはジャノメチョウばかりだった ミヤマカラスシジミ 周辺には結構ミヤマカラスシジミがいて過去数年の間に何回か撮影している 当日も1頭見つけたのだがクロヒカゲモドキ敗退で落ち込んでいたので気合が入らず、ピントを合わせる前に逃げられてしまった キマダラセセリ キマダラセセリは今年初見 この蝶も段々減っていくのではないかと心配になる オオムラサキ 山梨県といえば国蝶オオムラサキ ここ5年以上オオムラサキに会いに毎年韮崎周辺まで出かけてくる 去年も一昨年も個体数が多く、今年も期待していたのだが思ったほど数が多くない 時期的に少し早いせいかクヌギの樹液が出ておらず吸汁するオオムラサキは全く見られなかった たまたま羽化したばかりのような若い新鮮なオスが近くにとまってくれたので「今年のオオムラサキ」を撮影することができたが、森林伐採の影響がどこまで及ぶのかオオムラサキも心配である ヤマトシジミ 普通のヤマトシジミ 撮影場所は茅ヶ岳登山口の深田久弥記念公園 5年くらい前まではこの公園周辺にアサマシジミが棲息していた クロヒカゲモドキとは違い、こちらの蝶は何回も撮影チャンスをいただいているのだが、2~3年前から姿を見せなくなり、今では消滅してしまった ご近所の住人の方の話では環境整備のため草刈りをして食草(クサフジ類)をなくしてしまったのが消滅の原因だという 現地にはヤマトシジミしかいなかったので不本意ながら撮影させていただいた オオバジャノヒゲ いろいろと蝶を追いかけているうちに植物も春の花から夏の花への変換が進んでいる 森の日の当らない場所にはオオバジャノヒゲが咲いていた 地味な花だが、良く見るとなかなか雰囲気がある チダケサシ 花のイメージからは遠いが、ユキノシタ科の植物 採ったチダケ(乳茸)をこの植物の茎に刺して運ぶといわれる なぜかアカシジミの発生シーズンに多い植物のような印象が強い カラマツソウ 夏になると植物が茂って背の低い花には日が当らなくなる 夏に咲く花は背丈が高く白い花が多いような気がする カラマツソウの仲間はいろいろと種類が多いが、これはごく普通のカラマツソウのようだ タケニグサ こちらも背丈があって地味な白い花 「竹似草」という名前は違和感があるが、外見ではなく、茎が中空なので竹似草というらしい オカトラノオ 背丈はないのだが草原の中で真っ白な花が目立つ この花には昆虫が多く集まるので写真の被写体になるチャンスが多い ヒヨドリバナ これから夏が始まるというのに、秋の高原に多いヒヨドリバナがもう咲き始めていた うかうかしていると蝶のシーズンもすぐ終わってしまう ヤマユリ 季節の花ヤマユリも咲き始めている この花の花ことばは「威厳」がポピュラーだが、もう一つ「人生の楽しみ」というのがある 年をとったわれわれにはこちらのほうがイメージ的に会うようだ クロヒカゲモドキに振られたブログなので、タイトルバックにはヤマユリの写真を使うことにした (ネイチャーフォトは人生の楽しみという意味で) ナデシコ 白い花ばかり続いたので色鮮やかな花で締めることにしよう まずはナデシコ 日本では(特に男子の)サッカー熱が急に覚めてしまった感があるが、ナデシコのほうはまだ期待が持てるようだ ノアザミ アザミは完全に夏の花で春から咲くアザミはノアザミくらいしかない そのため、良く調べもせず初夏のアザミをノアザミと決めてしまうが、そろそろいろいろなアザミが咲き始める面倒な季節になったようだ クガイソウ こちらも初秋の高原の花のイメージだが、もうクガイソウが咲き始めていた クサフジ マメ科の野草は種類が多い 最近は草刈機が普及して野草が刈り取られてしまうことが多いが、クサフジのようにある程度花がまとまっていると生き残るチャンスも多いようだ ムラサキシキブ 自然界の中で美しい花が消滅して行く傾向が強いが、なぜかムラサキシキブという植物は数が増えているような気がする 木本で盗掘しにくいうえに、花も実も美しいので刈り取られずにすんでいるのかもしれない ちょうど花が満開の時期だったが、ピンクとイエローの組み合わせは十分アップに耐える被写体だった
by mustachio
| 2014-07-11 15:41
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Comments(3)
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ひかり
at 2015-04-24 08:32
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はじめまして。私は関西の蝶愛好者です。クロヒカゲモドキは昨年大阪で生息地を探し出しましたが、非常に苦労しました。こちらでの食草はススキですが、ススキが下草に生え笹と拮抗している薄暗い雑木林が生息地でした。特に大切なのは「薄暗さ」です。ジャノメチョウは明るい場所を好みますの場所が違います。他の蝶としてはコジャノメ、カラスアゲハ、サトキマダラヒカゲあたりでしょうか。ちなみに暗すぎてもダメで、クロヒカゲがいる場所には見当たりませんでした。いずれにせよ、非常に環境にこだわる種であると感じています。
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mustachio at 2015-04-24 12:25
コメントありがとうございます
ブログにも書いていますが、クロヒカゲモドキとは縁が薄く苦労しています(ブログのポイントも昔は薄暗いススキの多い場所だったのですが木が切られて明るい場所に変わってしまいました) 今年は何とか撮影したいと思っていますので情報があればご教示ください mustachio
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ひかり
at 2015-04-30 23:02
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連続のコメント失礼いたします。当方は大阪の産地しかわかりませんが、もう一点特徴を書き込みいたします。クロヒカゲモドキに出会ったのは7月下旬の18時頃でした。それまで、全く見つからなかったのに、突如どこからともなく現れ、2頭の雄が凄まじい速さでススキの原っぱの上を追尾しました。活動時間にもこだわるようで、夕方日暮れ前がよいようです。同じ時間にクロコノマチョウも活動していました。したがって、産地を見つけても時間を合わせないと会いづらいかと思います。管理人様のご参考になれば幸いです。
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