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還暦からのネイチャーフォト

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2016年 07月 29日

黒川温泉のクロヒカゲ「モドキ」

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今回のブログタイトルは「黒川温泉のクロヒカゲモドキ」になる予定だった
リピーターリーダーの方はすでにご存じのはずだが、私の一つのテーマである「日本の蝶」撮影種が現在249種まで来ておりクロヒカゲモドキが撮影できれば念願の250種達成なのだ
そして今年の夏(九州から東海までが梅雨明けとなった7月18日)われわれ夫婦は熊本の黒川温泉へ出かけた
もちろん観光旅行が主目的なのだが、黒川温泉は九州のクロヒカゲモドキ産地として有名なところ、昔の採集案内書には詳細なポイントが載っていてかなりの確率で撮影可能と期待していた
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蝶に詳しい方はご承知なのだがクロヒカゲモドキはジャノメチョウ科(亜科)の蝶でススキなどを食草としクヌギやコナラなどの林の近くに棲息する
昼間は木の幹やススキの藪の中でじっとしていて夕方に活動する(オスはテリトリーを張る)
探索はススキの藪を叩いての追い出しが主体で、夕方はテリトリーを張る蝶を見つけるのが探すポイントになる
現地へついてすぐ古い採集案内を頼りに歩き回ってみたが、案内書の情報は20世紀のもので地図に書かれたクヌギ林は新しい道路などが出来てすでに消滅していることが判った
第1日目は周辺の探索で条件のよさそうなクヌギ林とススキの原を探したが出会いはなく、ホテルも初めてのところなので夕方早めにチェックインし温泉と食事と酒を楽しんだ
2日目は昼間はあまり期待できそうもないので大分の九重高原や熊本の別のポイントまで足を延ばし、夕方までに黒川温泉に戻ってクロヒカゲモドキの活動を待機する作戦をとった
ところがその日に限って5時ごろから雨が降り出し雷を伴う夕立となった
そして3日目、今回は2泊3日の旅行のため夕方は飛行機に乗らなければならない
おまけに朝から雨(天気予報は晴れだが山沿いは雨だった)、それでも朝からクヌギ林に入りススキを叩いて回った
結果として撮影できた蝶が次のクロヒカゲである

クロヒカゲ
クロヒカゲは東京周辺でも見られる普通の蝶、クロヒカゲモドキのほうは今でも山梨・長野などに棲息しているがここ数年急速に数を減らした絶滅危惧Ⅱ類の蝶である
外見はよく似ているがクロヒカゲモドキは前翅裏面の蛇の目が3個で3個目(1番下)が大きいという特徴がある(前翅中室の暗色短条もモドキは1本クロヒカゲは2本だ)
旅行3日目の朝、雨の中で見つけた蝶はすべてクロヒカゲモドキによく似たクロヒカゲだった
(関東で見るクロヒカゲとはどことなく印象が違うのだが、識別のポイントはどう見てもクロヒカゲそのものなのだ)
残念ながら今年も日本の蝶撮影種は249種のまま推移しそうである
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ジャノメチョウ
同じジャノメチョウの仲間でもクロヒカゲやヒカゲチョウは日陰好みなのに本家ジャノメチョウは明るい草原を好み高原の花にも集まって来る
今年も山梨と熊本でクロヒカゲモドキを探したが、どこへ行ってもススキの原から飛び出してくるのはクロヒカゲモドキではなく、このジャノメチョウだった(どちらもススキ類を食草とするので当然といえば当然)
ジャノメチョウのほうが少し大型で色も飛び方も微妙に異なり一瞬で識別が可能なのだが、毎回ドキッとさせられる
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サトキマダラヒカゲ
クロヒカゲモドキ探索でもう一つ紛らわしいのがキマダラヒカゲ
こちらはクヌギなどの木の幹の周辺を飛び回るので、ドキッとするのはススキの原ではなくクヌギ林の探索中である
もともとキマダラヒカゲ(昔はサトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲの区別はなかった)は都内で普通に見られた蝶で、ある意味昆虫少年にも馬鹿にされていた
食草はススキではなくタケ・ササの類である
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ヒメウラナミジャノメ
こちらも普通種の蛇の目
10年くらい前までは東京近郊でもいやになるほど数がいたがここのところ急減しているようだ
こちらの食草はクロヒカゲモドキと同じススキやチヂミザサなので雑木林の衰退が影響しているのだろうか
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ホソバセセリ
翅裏の黒縁付き白斑がチャームポイントのセセリチョウ
60年前の昆虫少年時代は縁がなく、リタイア後蝶の写真を始めて山梨で初めて出会った
もともと数が多い種類ではないのにここ数年は出会いが多く加速度的に写真が増えている
明るい草原には見られず森林に接したやや日当たりの悪い場所に棲息するセセリなのだが、その生息環境や食草、出現時期がクロヒカゲモドキと一致するのがその原因、つまりクロヒカゲモドキに挑戦する度にホソバセセリの写真が増えるということになる
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ギンイチモンジセセリ
食草は同じススキ系なのにこちらは明るい草原を好むタイプ
昔は典型的な高原の蝶だったが今では東京近郊の河川敷などにも増えて広く親しまれているようだ
黒川温泉周辺は明るいススキの原が多かったのに出会ったのは3日間で1回だけだった
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クロシジミ
黒川温泉観光旅行の最大の収穫はクロシジミとの再会だろうか
この蝶は長野県や山梨県の草原でも見られるが絶滅危惧Ⅰ類の希少種である
クヌギ林やススキの原に多いのだが直接これらの植物を食べるのではなく、これらに寄生するアリマキの露に依存しさらにクロオオアリにも依存する変わった習性のため絶滅が懸念される蝶なのだ
シジミチョウとしては大型で、ススキの上に見つけた時は一瞬クロヒカゲモドキかと思ったほどである
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ベニシジミ
この蝶も普通種
というより子供のころからなじんだ都会の蝶である
それでも食草であるスイバなどが消えてしまい東京の郊外でもあまり出会いがなくなってきている
わざわざ九州まで出かけて見る蝶ではないがファインダー越しに見るオレンジと黒のデザインの素晴らしさを見直してしまった
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トラフシジミ
ヒメジョオンではトラフシジミが吸蜜していた
翅はかなり傷んでいて今シーズンのタイガーズを象徴するようだった
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コミスジ
2日目の夕方と3日目の朝の雨以外は熊本は晴天に恵まれた
クロヒカゲモドキ探索のため駐車場に停めたレンタカーにはコミスジが遊んでいた
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カラスアゲハ
アゲハ類はクサギの花で吸蜜するカラスアゲハを一度見かけただけで、今回の旅行は蝶に関してはいまいちの結果に終わったようだ
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ミヤマアカネ
山梨の探索で多く見かけたミヤマアカネが九州にもいた
九州のミヤマアカネは成熟個体で縁紋がすでに赤くなっていた(未成熟のものは縁紋が白い)
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ハグロトンボ
黒川温泉の渓流は筑後川の源流に当たる
数は多くなかったが渓流に近いクヌギ林にはハグロトンボが飛んでいた
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ヤマトシリアゲ
シリアゲムシの仲間は昆虫類の中でもシリアゲムシ目を形成する変わり者集団である
現地で何回か見かけたので写真を撮影したが種名まではわからなかった
帰宅後の検討ではヤマトシリアゲという普通のシリアゲムシのようだ
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カラスウリ
林縁でカラスウリの花を見つけた
植物は全くの独学自己流だが10年もやっているとカラスウリの花ぐらいは一目でわかるようになる
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ノコギリソウ
クロヒカゲモドキを探した草原にはノコギリソウが多数咲いていた
2日目に訪れたタデ原の観察センターの表示ではアソノコギリソウと説明されていたが普通のノコギリソウとどこが違うのかは定かではない
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オカトラノオ
オカトラノオはこの季節の花である
黒川温泉のオカトラノオはオカトラノオらしく咲いていたのでオカトラノオらしく撮影した
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キバナノカワラマツバ
こちらもこの季節の花で榛名湖に咲いていた花が九州でも咲いていた
花らしくない花なので「咲いていた」というイメージではないが
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クサフジ
クサフジはマメ科ソラマメ属の植物
酒のつまみとして大好物のソラマメの仲間なので親しみを感じる
同じ仲間にツルフジバカマがあるので写真を撮るときは葉が見えるように写す必要があるのだ
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コマツナギ
山梨で多く見かけたコマツナギが九州にもあった
ただこの植物を食草とするミヤマシジミは九州には生息しない
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カワラナデシコ
黒川温泉の草原で一番目立った花はカワラナデシコだった
ススキの原にピンクのナデシコは色彩的にインパクトがある
ナデシコといえばあと数日でリオオリンピックが始まるようだ
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ママコナ
数は多くなかったが草原にはもう1種ピンクの花があった
花の中に白い米粒(のようなもの)を持つママコナである
今までに見たのは比較的高い山の登山道だった記憶があるのだが、黒川温泉では草原に普通に生えていた
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タデ原湿原の植物
旅行の2日目九重のタデ原湿原へ遊びに行った
熊本県と大分県で県が異なるため観光面での連携はよくないようだが、黒川温泉とは車で1時間の距離である
この湿原はラムサール条約指定で木道が完備しており美しい湿原だった
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ホオアカ
ラムサール条約は水鳥の生息地として国際的に重要な湿地を指定するものだと思うが水鳥の姿は全く見られなかった
湿原の中央の遠い位置に本州では最近なかなか見られなくなったホオアカが囀っていた
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ハンカイソウ
湿原で目立ったのがマルバダケブキによく似たハンカイソウ(樊噲草)
見たことがない花だと思ったら静岡以西の本州と九州にしか生育していないらしい
マルバダケブキとは葉の形がまるで違うのが興味深かった
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ヤマアワ
花穂が粟に似て山地に多いので山粟というらしい
イネ科の植物は(花はあるが)華がないので植物図鑑にもネグレクトされることが多く同定に苦労させられる
(今回は管理センターに写真と名前が表示されていた)
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チダケサシ
東京近郊にも多いチダケサシだが、関東のチダケサシは薄茶色に近いものが多いのに九州のチダケサシはピンク色をしていて華やかである
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クサレダマ
「腐れ玉」ではなく「草連玉」
マイフィールドの群馬県バラギ湖にも多いのですぐ識別できる
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キスゲ
今年は6月から7月にかけてニッコウキスゲをよく見たがこの植物は本州中部地方以北でしか見られない
九州でこれに近いのが色が少し淡いキスゲである
ドライブしていて時々見かけるのだがキスゲはいつも花を閉じて萎れている
タデ原湿原でどうにか咲き残っているのを撮影したが、図鑑によればキスゲの花は夕方咲いて翌朝しぼむ1日花だという
風情はあるが、観光資源としてのパワーはニッコウキスゲに大差をつけられそうだ
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ヒメユリ
オレンジのユリといえばオニユリ、コオニユリ、クルマユリなどを思い浮かべる
名前はポピュラーなのに花のイメージがすぐに浮かばないのはヒメユリが希少で見る機会が少ないからのようだ
タデ原湿原のヒメユリはコオニユリなどより赤が鮮烈で非常に印象的だった
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ノアザミ
アザミの仲間は種類が多く識別が難しい
普通種でもノアザミとノハラアザミの識別など今でも理解できていない
九州でありがたいのはノハラアザミが生育していないこと、普通のアザミはたいていノアザミなのだ
管理センターでも「ノアザミ」と名前が表示されていた
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ノハナショウブ
ここのところ見る機会が多かったのでノハナショウブはすぐ識別できるようになった
花弁に綾目がなく中央に黄色い筋があるのがノハナショウブである
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ヒゴタイ
今回九州遠征の植物編の目玉は何と言ってもこのヒゴタイ
タデ原湿原で紫色のミラーボールをしっかり撮影することが出来た
ヒゴタイは日本では九州地方などの限られた場所にしか残っていない大陸系植物で日本が大陸とつながっていたことを証明する貴重な存在だという
ちなみに熊本にあるので肥後タイかと思っていたら名前も大陸系で平江帯と書くようだ
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2016年の九州遠征記は以上
地震後3ヶ月を経過しても阿蘇周辺は倒壊した家や屋根にブルーシートを乗せた家が多く見られた
数年前オオウラギンヒョウモンを撮影したポイントは交通遮断でアクセス不能になっていた

by mustachio | 2016-07-29 23:29 | Comments(0)


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